変わっていくこと
中学3年生は1月の私立高校の入試も終わり、公立高校の入試も近づいてきました。大学受験も大学入試共通テストも終わり二次試験が迫っています。
当塾も忙しい時期が年明けから始まっていますが新年度の生徒さんの募集も開始しています。新年度に向けて2月のこの時期から準備しておくことは大切です。当塾の生徒さんには次の学年の範囲の学習を始めています。早く始めることで春期講習での課題が見つかりやすいからです。前年度までの復習に費やすか次年度の先取り学習に比重をかけるのか、その学習量の比率を判断することができます。
新年度に向けてよいスタートを切りたいと考えている生徒さん、保護者様のご連絡をお待ちしております。
話は変わりますが、毎年生徒さんに問われることがあります。それは「勉強することに意味があるのか」という質問です。おそらく多くの生徒さんが1度は考えたことがあるのではないかと思います。
勉強して何かを得られるとしたら知識でしょう。しかしその知識が将来自分にどんな利益を与えてくれるのかはその時点ではわかりません。それならばもっと自分の利益になること、自分にプラスになる実用的なことをやりたいと考えるのもなるほどそうだなと思います。
僕がその問いに面と向かって答えることはなかなかできないでしょうが自分のなかで思うことはあります。勉強をして知識を得るということは自分が変わるということなのではないかと考えたりします。何かを外から自分のなかに得ることに着目するのではなくて自分が変わっていくということに着目してみたらどうでしょうか。
自分が変わるということは自分の周りを見る目線が変わっていくということです。価値観がどんどん変化していくと言っていいかもしれません。そうするといつも話していた友だちと段々話が合わなくなってくるかもしれません。逆にますます話が合って仲が良くなっていくかもしれません。社会の仕組みに自分がフィットしてくるかもしれませんし住みづらいなと思ってくるかもしれません。
勉強をして知識を得るということはひとつの賭けと言うことができるのかもしれません。変わっていくことがプラスになるのかマイナスになるのか。おそらくその両方を経験するのだろうと僕は思います。
僕は学生時代にフランス語の先生からフランスの哲学者ジル・ドゥルーズの本を勧められました。ドゥルーズの哲学はいろいろな読み方がされていますが自然哲学としても読まれています。僕たちは生きている「いま」を人間として生きていると思います。近代という時代に人間は特別な存在でした。特別な存在である僕たち人間は「人間はこうあるべきだ」と考え、その考えが個というものを強くしたと思います。そうした考えは帝国主義の時代を経て世界中に影響を与えていったと思います。
ですが僕たちはそんなに個、もっと言えば人間にそれほどこだわる必要があるのでしょうか。そう考えたときにドゥルーズの哲学は僕にヒントを与えてくれます。僕たちが人間というものを中心に考えると、当然のことですが人間主義になってしまいます。その人間主義の言っている人間とはいったい何なのか。近代という時代には西洋の人間だったかもしれません。しかし現代は様々な性別、人種、民族などが共存していく社会です。多様性が求められるそんな時代です。ドゥルーズの哲学というのは人間が人間になる前に戻ろうとしているように僕には読めるのです。
僕たちは人間主義をまず捨ててもっと前の段階から基礎づけしなおすべきなのではないか。そうすると僕たちがいま定義している人間を捨てて自然のなかにもう一度僕たちを戻すことができる、そこからもう一度僕たちを考えることができるのではないだろうか。そんなことをドゥルーズの哲学は教えてくれている気がします。
他にもドゥルーズの哲学はいろいろなことを考えさせてくれます。例えば『アンチ・オイディプス』という本を読んでいると資本主義はまさに人間主義が産み出したものだと思いますが、マルクスという人は人間主義を捨てたところにもう一度世界のシステムをつくり出そうとしたのではないか、だからマルクス主義は多くの人を魅了したのだろうか、などとそんなことも考えてみたくなります。
ここまで読んでいただいた方のなかには話が脱線したように感じられた方もいたかもしれませんし、何か変なことを言っていると感じられた方もいるかもしれません。例えばこれが知識を得たときに変わっていくことのひとつの例だと感じていただけるとありがたく思います。
変わっていくことを恐れないで進んで行く。性別や人種、民族など様々なカテゴリーに縛られないように変わっていく。自分が変わっていくことを知っている人は他者が変わっていくことにも寛容になれるのではないか、そう考えもします。
勉強をすることは自分が変わっていくこと、そう考えてみるのもひとつの答えかなと考えています。学生である以上は勉強はしなくてはなりません。この記事が勉強を楽しくできるように自分を動機付ける一助になっていればと思います。
